お知らせ
この間様々なメディアで養育費のことが取り上げられることが増えてきています。養育費を受け取れている人が少ないことが日本におけるひとり親家庭の貧困の要員の一つだと考えられており、国も対策を検討しているところです。
「子どもの権利」と言われる養育費。きちんと受け取ることができれば子どもの育ちの支えになることは間違いありません。今回はその養育費についてご紹介します。
養育費とは?
養育費とは,子どもの監護や教育のために必要な費用のことをいいます。一般的には,子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し,衣食住に必要な経費,教育費,医療費などがこれに当たります。
子どもを監護している親は,他方の親から養育費を受け取ることができます。なお,離婚によって親権者でなくなった親であっても,子どもの親であることに変わりはありませんので,親として養育費の支払義務を負います。
(出典:法務省HPより引用)
日本における養育費の現状
厚生労働省の調査(平成28年全国ひとり親世帯等調査)によると、「養育費を現在も受けている」母子家庭は24.3%にとどまっており、逆に「養育費を受けたことがない」母子家庭は56.0%に上っています。
実に半数以上の子どもが養育費を受けておらず、非常に厳しい状況となっています。
諸外国では行政が主体となって養育費の確保に関する施策に取り組んでいますが、日本ではそうした取組が遅れており、それが半数以上が養育費を受け取れていない要因の一つであると考えられています。
諸外国の取り組みに関する例を挙げると、例えばスウェーデン、ドイツ、フランスでは国による養育費の立替払い制度があったり、アメリカ、イギリス、オーストラリアでは国による強制徴収制度が設けられています。
日本においては国をあげての取組はこれからという段階で、諸外国のように「養育費が確実に子どもに届くための支援」が充実していくことが求められます。
養育費の金額の相場は?
養育費の金額は基本的には話し合って決めることになりますが、その際に参考となる資料があります。
東京及び大阪の家庭裁判所の裁判官による研究報告である「算定表」です。
こちらの算定表を見ると、養育費の金額を決める上で大事になってくるのが「子どもの人数」「子どもの年齢」「義務者(養育費を支払う側)の収入」「権利者(養育費を受け取る側)の収入」の4つの項目であることがわかります。
例えば子どもが2人(第1子15歳以上、第2子0〜14歳)、義務者の収入500万、権利者の収入200万の場合、6〜8万円/月が標準的な養育費の額となります。
養育費はいつまでもらえる?
一般的には子どもが成人するまで支払う義務があるとされており、20歳までとしているケースが多いようです。
ただし、大学への進学等子ども自身の経済的な自立が難しい場合は20歳を過ぎても支払われるケースもあります。
逆に高校卒業後に進学をせず就職をして、自分で収入を得られるようになった場合は20歳になる前に養育費の支払いが終わることになります。
※ちなみに2022年4月1日から成人年齢を18歳へ引き下げる法律が施行されます。ただ養育費に関しては取り決めにおいて「満20歳まで」と決めていれば成人年齢の引き下げが起きても影響されることはありません。
養育費は離婚してしばらく経ってからでももらえる?
離婚時には様々な事情で養育費に関する取り決めをしていなかったけど、状況が変わって養育費がもらえるならもらいたい・・・
そんな風に思われる方もいると思います。
離婚してから時間が経ってるし無理だろうと諦める方もおられるかもしれませんが、安心してください。そのタイミングから養育費の請求をすることも可能です。
例えば子どもが小さい時にはそこまでお金がかからなかったけど、中学生に上がって食べる量も増えたし、受験に向けて塾に通わせたりとこれまで以上にお金がかかるようになるということはあると思います。
そのような状況を打破するために仕事を増やすというのも選択肢の一つだとは思いますが、それによって心の余裕を失っていく保護者を見るのは子どもにとっても辛いです。
乗り越えるべき問題はいくつかあるかもしれませんが、養育費もその状況を打破する一つの手段であるということはぜひ心に留めておいていただきたいです。
養育費はどうすればもらえる?
父と母で話し合ってもらうのが基本になります。取り決めをする際には以下の項目について具体的に決めておくといいです。
(1)養育費の額
折り合いがつかない場合は先ほど紹介した算定表を参考にしてください。子どもが複数の場合はそれぞれの金額を決めておきましょう。
(2)支払い期限
支払いの時期を決めてください。毎月決めた日までに支払うようにしましょう。
(3)支払い期間
支払いの開始時期と終了時期を決めておきましょう。
(4)その他
定額の養育費とは別に、入学金や医療費などの臨時的な費用負担等についても決めておくといいでしょう。
(5)支払い方法
支払い方法(口座振込など)を決めておきましょう。複数の子どもがいる場合は、それぞれについて決めておくといいでしょう。
未払いを防ぐために
養育費の取り決めに関して一定の条件を満たす公正証書を作成しておけば、養育費を支払ってもらえない場合に速やかに強制執行の手続きを利用することができます。
離婚に関する公正証書の作成を希望される方はお近くの公証役場に相談してください。
また相手が話し合いに応じてくれない場合や話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の家事調停手続きを利用することができます。
こちらは相手の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所にて申立を行うことができます。
家事調停手続きにおいても話し合いがまとまらなかった場合は裁判によって結論が出されます。
ただしこの調停申立についてはかなり負担が大きくなります。相手の住所地を探す手間があったり、裁判によって最終的に結論が出るとはいえ、その分時間もかかってしまいます。
養育費に関する法制度が検討される中で、調停申立にかかる負担が軽減されるよう改善されることが望まれます。
自治体による支援の取り組み
まだまだ数は少ないですが、各地の自治体で養育費に関する支援の取り組みが始まっていますのでご紹介します。
(1)合意形成支援(明石市など)
参考書式の配布や養育費確保に関する法律相談に応じてくれます。この法律相談には相手方の相談対応(例:仕事をリストラされて養育費区を減額したい場合など)も含まれます。
(2)債務名義化支援
①調停申立支援(大阪市、明石市など)
調停申立書の作成のアドバイスや申立にかかる費用を補助してくれます。
②公正証書作成支援(大阪市、明石市、湖南市など)
公正証書作成のアドバイスや作成にかかる費用を補助してくれます。
※お住まいの自治体が上記のような支援を行っているかどうかは直接役所にお問い合わせください。
さいごに
私はこの間兵庫県明石市において養育費の取り組みに関する検討会の委員をさせていただきました。
その中で強く感じたことがあります。
「養育費は子どもの権利である」と言われる一方で、子ども自身がその権利を行使できるような状況にはまだまだないということです。
「元配偶者とこれ以上連絡を取りたくないから、養育費はいらない」
こうした思いをお持ちの保護者の方は少なくないと思います。その気持ちもわかる一方で、養育費が子どもの権利であるということを考えると、大人の都合でもらう・もらわないを決めてしまうのはちょっと違うんじゃないかなぁと私は思っています。
子どもの年齢が小さければ難しいですが、例えば中学生、高校生くらいの年齢であるならば、子どもの意思を確認するということも大事なのではないかと思っています。
私は未婚の母子家庭で育ちましたが、もし私が中学生、高校生の頃に養育費のことについて意思を確認されれば、迷わず欲しいと答えたと思います。
親同士の複雑な事情があるかもしれませんが、養育費がもらえるなら母を少しでも楽にすることができると思うからです。
当事者として育ち、今ひとり親家庭の支援を行うNPOの代表として願うことは、子どもの権利である養育費が大人の気持ちや事情に左右されず、子どもが健やかに育つために子どもの元にきちんと届くようになって欲しいということです。
その実現のために、私も微力ながらできることをやっていこうと思います^^
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あっとすくーる代表 渡 剛