お知らせ
今回から数回に分けて、一人の生徒との関わりについてお話ししたいと思います。
中学2年生の終わりに出会い、中学校を卒業するまで関わり続けた、一人の男の子です。
長い間学校へ通えておらず、進路への不安も抱えていました。
この一年間、私たちは勉強だけでなく、学校へ向かうことや身の回りのこと、進路のことまで、その子と一緒に考え続けました。
振り返ってみると、「ひとりに、とことん。」という言葉を最も実感した一年だったように思います。
今回は、その最初の頃のお話です。
毎週塾へ来ること

初めて会った時のことは、今でもよく覚えています。
長い間学校へ通えておらず、お母さんと一緒に入塾の相談に来てくれました。
髪は伸び放題で、話を聞いているのか、聞いていないのかも分からない。
こちらの言葉が届いているのかも分からない。
そんな第一印象でした。
それでも、こちらが提案することは、嫌がることなく受け止めてくれる。
そんな生徒でもありました。
当時、その子には、勉強や進路など、たくさんの課題がありました。
でも私は、まず勉強を頑張ってもらおうとは思いませんでした。
長い間学校へ通えていない子にとって、毎週決まった時間に一つの場所へ通い続けることは、決して簡単なことではありません。
だから最初の目標は、「毎週塾へ来ること」でした。
数学を少し勉強して、一緒にゲームをする。
勉強だけで終わる時間にはせず、「また来よう」と思える場所を一緒につくることを大切にしていました。
Switchを開き、ゲームのことについて話す。
「このキャラクター強いよな。」
「いや、こっちの方が強いって。」
勉強の話よりも、ゲームの話をしている時間の方が長かった日もありました。
でも、そんな時間があったからこそ、少しずつ距離は縮まっていったのだと思います。
学校までの道のり

塾にも、少しずつ安定して通ってくれるようになりました。
塾には来られるようになってきた一方で、学校へ行くことは、まだ大きな壁のままでした。
あっとすくーるでは、学校へ一緒に行くアウトリーチ事業も行っています。
当時も別の学生が担当していましたが、学校へ行くことには、なかなかつながっていませんでした。
だったら、自分が担当しよう。
自分が一緒に学校へ行けば、その子も行けるかもしれない。
そんなことを考えました。
本人に伝えたのは、一つだけです。
「迎えに行くから、制服を着て待っていて。」
当日、自宅へ迎えに行くと、本当に制服を着て待っていてくれました。
学校までの道では、学校の話はほとんどしません。
いつも通り、ゲームの話ばかりでした。
どのキャラクターが強いのか。
そんな話をしながら、一緒に学校へ向かいました。
学校へ着くと、どうやって学校へ入ればいいのか分からない様子でした。
彼は私の隣ではなく、数歩後ろを歩いていました。
長い間学校へ通えていなかった子にとって、学校へ向かうことは、それだけ勇気のいることだったのだと思います。
だから、その日は無理に背中を押すのではなく、ただ隣で一緒に歩こうと思いました。
「数学だけでも受けてみよう」

塾と学校の別室。
二つの場所で過ごす日々が始まりました。
学校では塾で進めていた数学の続きを一緒に勉強し、時にはゲームの話をしながら過ごしました。
そんな時間を毎週積み重ねていきました。
そして、担当になって最初の定期テスト。
「数学だけでも受けてみよう。」
そう本人に伝えました。
数学は、もともと苦手というわけではありませんでした。
塾でも基礎から少しずつ積み重ねてきたので、「きっとできる」と思っていました。
後日、本人が持ってきてくれた答案には、30点を超える点数が書かれていました。
一般的に見れば、決して高い点数ではありません。
それでも、普段学校へ通えていない中で、テストの日に学校へ行き、自分の力で30点を超えることは、決して簡単なことではありません。
その子が積み重ねてきたものが、初めて結果として表れた瞬間だったように思います。
思わず、私の方が嬉しくなったことを覚えています。
本人は言葉にも、表情にもあまり出しません。
でも、きっと嬉しかったのだと思います。
そんな小さな変化が、とても印象に残っています。
変わり始めた日々

この頃は、まだ毎日学校へ通えるようになったわけではありません。
大きく何かが変わったわけでもありません。
それでも、塾へ通うことが日常になり、週に一度、一緒に学校へ向かうようになりました。
一歩ずつではありましたが、その子の中で確かに前へ進み始めていたのだと思います。
そして、この小さな積み重ねが、この先の一年につながっていきます。
この一年を通して、私は改めて「ひとりに、とことん。」という言葉の意味を考えることになりました。
その続きは、次回お話ししたいと思います。
#2へ続く‐‐‐
「ひとりにとことん。」向き合い続けた1年間#2 「勉強以外に大切にしたかったこと。」
保護者の皆様へ
勉強だけでなく、学校へ行くことや居場所づくりなど、お子さん一人ひとりに合わせた関わりを大切にしています。
どんな状態でも、まずはお気軽にご相談ください。
ご寄付をご検討の皆様へ
こうした一人ひとりに寄り添う時間は、皆様のご支援によって支えられています。
子どもたちが安心して前へ進める居場所を、これからも一緒に支えていただけると嬉しいです。









