お知らせ
今回も、前回に続いて、一人の生徒との関わりについてお話ししたいと思います。
長い間学校へ通えておらず、人と話すことも、自分の気持ちを表に出すことも少なかった一人の男の子。
第1話では、そんな彼と「毎週塾へ来ること」を最初の目標にし、一緒に学校へ向かうようになるまでをお話ししました。
少しずつ塾や学校へ足を運べるようになってきた頃、私にはもう一つ、大切にしたいことがありました。
勉強以外に大切にしたかったこと

初めて会った頃から、ずっと気になっていたことがありました。
それは、髪でした。
長く伸びた前髪で目元が隠れ、本人も身だしなみにあまり興味がない様子でした。
家から出ることも少なく、ゲームをして過ごす時間がほとんどだったので、自分から髪を切ろうと思う機会も、きっと少なかったのだと思います。
第1話でお話ししたように、塾へ通うことや学校へ向かうことは、少しずつ日常になってきていました。
だから次は、勉強だけではない部分にも、一緒に向き合ってみたいと思いました。
中学3年生という時期だからこそ、自分の姿を少し好きになれたり、自分に少し自信を持てたりするきっかけになれば。
そんな思いが、私の中にはありました。
一緒に美容院へ

髪を切ることについては、事前に保護者の方へ相談しました。
快く了承してくださり、本人にも話をして約束をしました。
本人は、あまり乗り気ではありませんでした。
それでも当日は約束どおり来てくれて、私がいつもお世話になっている美容院へ一緒に向かいました。
担当の美容師さんにも事情を伝えながら、「こんな感じでお願いします。」と一緒に相談しました。
長く伸びていた髪は、見違えるほどすっきりしました。
今風のセンター分けに、少しウルフっぽさもある髪型。
とてもよく似合っていました。
本人は言葉にも表情にもあまり出しません。
ただ、
「前が見える。」
そう一言だけ話してくれたことを覚えています。
その何気ない一言が、私にはとても印象に残っています。
次は服を買いに行こう

美容院を出たあと、一緒に写真を撮りました。
その写真を見返した時、今度は服が目に入りました。
髪はかっこよくなっているのに、小学生の頃から着ていたというサイズの合わないシャツを着ていたのです。
「次は服を買いに行こう。」
そう約束して、別の日にショッピングモールへ向かいました。
別の学生も一緒に行き、みんなで服を選びました。
本人は少し照れくさそうでしたが、新しく買った服を、その後塾へ来るたびによく着て来てくれるようになりました。
保護者の方からも、
「家でその日のことを話してくれました。」
という連絡をいただきました。
家で自分からその日の出来事を話してくれたことが、とても嬉しかったそうです。
私にとっても、その日の買い物が、その子にとって特別な時間になっていたことを実感できた出来事でした。
変わり始めた日々

髪を切ったから学校へ行けるようになるわけではありません。
服を買ったから成績が伸びるわけでもありません。
それでも、自分の姿を少し好きになれること。
誰かと一緒に買い物へ行って笑うこと。
そんな一つひとつの経験が、その子の自信につながっていたのだと思います。
そして、その変化は、少しずつ将来のことを考えるきっかけにもなっていきました。
この一年を通して、私は改めて「ひとりに、とことん。」という言葉の意味を考えることになります。
その続きは、次回お話ししたいと思います。
#3へ続く—
【「ひとりに、とことん。」向き合い続けた1年間 #3「自分で未来を選び始めた日」】
保護者の皆様へ
「勉強しなさい」と伝える前に、その子が少しでも自分に自信を持てる時間が必要なことがあります。
私たちは、勉強だけではなく、その子が安心して笑えたり、「やってみようかな」と思えたりするきっかけも大切にしています。
お子さんのことで悩まれていることがあれば、どうか一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。
ご寄付をご検討の皆様へ
子どもたちが自分に少しずつ自信を持ち、「やってみよう」と思えるようになるまでには、勉強だけではない関わりが必要です。
皆様からのご支援は、こうした一見遠回りに見える時間を支え、一人ひとりに寄り添い続ける活動につながっています。
これからも、子どもたちが自分らしく未来を選べるよう、ともに支えていただけると幸いです。









