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お知らせ

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2020.4.30
明石市の学生支援|最大50万無利子貸与制度の意義を当事者視点で解説

先日、児童扶養手当を受給するひとり親世帯に5万円の追加支援を決めた明石市が、コロナの影響で困窮する学生に対し、50万円を無利子で貸与するという制度を開始しました。

 

学生への配慮がふんだんに盛り込まれた制度の詳細を、ひとり親家庭の当事者であり学習支援NPO代表である私が、解説させていただきます!

 

当事者目線で設計されている事がよく分かる制度の概要

今回、明石市が行った支援は、「もし僕が明石市在住で制度の対象者に該当するなら、絶対に申請したい!」と思えるような、配慮が盛り込まれた仕組みとなっています。

以下、制度の詳細をみていきましょう。

 

①子ども本人が申請できる

子ども本人が申請できる
最大の特徴は、子ども本人が申請できるということです。

 

保護者が申請する制度の場合、

・保護者の状況によってはそれが難しい場合がある
・保護者が申請を拒否し子どもを退学に追い込むという可能性がある
というリスクが懸念されます。

 

しかし、今回の明石市は本人が申請できる形になっており、上記の心配がありません。

たとえ、未成年者であっても、保護者には書面で貸付内容を通知するだけとなっており、保護者の同意なく申請できます。

 

何のハードルもなく同意してもらえる家庭にとっては別段騒ぎ立てるものではありませんが、保護者同意を得るのが難しい家庭で暮らす学生にとって、これは大きな配慮です。

 

②直接学校に明石市が振り込む

直接明石市が振り込む
また、本人や家庭の口座に振り込んでしまうと、保護者もしくは別の家族に使われるというリスクも想定されます。(こうしたお金関連のトラブルは僕自身何度も経験してきました)

 

今回の明石市の制度では、市が学校に直接振り込んでくれる制度になっていますので、別の用途に使われる心配がなく、きちんと学費の補填として使用することができます。

 

困窮世帯で暮らす学生が置かれている状況をしっかりと理解してくれていることが、ここからも伝わってきます。

 

③何よりもこのスピード感!

この件で泉市長と連絡を取らせてもらった際におっしゃっていたのが、「とにかくスピードを意識した」ということでした。

 

すでに、兵庫県内の大学では前期の納入期限を過ぎている大学があります。そこに通う学生たちが「ああ、滞納してしまった・・・払える目処もないし、もう退学しかない・・・」と気持ちが落ち込んでしまう前にメッセージを届けたかったとおっしゃってました。

 

このタイミングでこのメッセージを出すことで「社会はあなたたちのことを見捨ててないよ!」というメッセージを届けたかったということなんだと思います。

 

この辺のお金の切迫感は、僕も良くわかります。もし僕が今大学生だったとしたら、間違いなく途方に暮れていました。家族にも余裕はない、頼れない。相談できる相手もいない。「ああ、終わったな・・・」と思うしかない状況です。

 

この当事者の心の機微を理解して、それを政策として実行してくれる。かつ、このスピードで。こんなに安心感を届けてくれる制度はそうそうありません。

 

最後に

最後に
「貸付ではなく、給付にできなかったのか」等の疑問をもたれる方もいるかと思います。確かに、困窮世帯で暮らす学生に寄り添うならなおのこと、給付の方がいいことは間違いありません。なので、今回のこの制度が「困窮状態にある学生を救う最高の方法」かと言われれば、残念ながら答えはNOになります。

 

ただ、給付となれば要件のハードルが上がり、かえって使い勝手の悪いものになる可能性もあります。(成績優秀な学生しか使えない、などです)

 

なお、給付を求める学生は、国が2020年4月から開始した「大学無償化制度」を利用するという選択肢も考えられるでしょう。

 

制度設計に時間がかかり、リリースできた頃には学生たちは退学の手続きが終わってしまっていた、なんてことになったら、本末転倒です。

 

まず何より「社会はあなたたちのことを見捨てていない」という当事者へのメッセージと「私たちには、困窮状態にある学生を支える責任があるんじゃないのか」という社会全体へのメッセージ(問題提起)を急がなければならなかったことを考えれば、このスピードで制度を設計し、リリースした明石市がやっぱりすごいと思います。

 

以上が、ひとり親家庭で育った当事者の目線から見た今回の明石市の困窮学生への支援策への感想です。

この取組を「明石市すごい!」で終わらせるのではなく、みなさんが暮らしている自治体にも広げていきませんか?

社会全体でこの困難を乗り切りましょう!

 

あっとすくーる代表 渡 剛