お知らせ
先日、「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』という制度が文部科学省より発表されました。
(出典:文部科学省)
経済的に苦しい状況にある学生たちを支援してくれる制度なので非常にありがたいのですが、留学生には成績要件があるなど、制度の不備が指摘されています。
今回の要件で困るのは、実は留学生だけではありません。ひとり親家庭特有の事情で、困っているけどこの制度を使えない大学生がいます。
一体どのような状況にあるのか、解説していきます。
支給対象者の要件
申請の手引きを確認すると、以下のような要件となっています。
(出典:文部科学省)
冒頭に「最終的には申請内容を踏まえて大学等において判断します」とあるように、一部条件を満たしていなかったとしても採用してもらえるのかもしれません。
ただ、今回私たちのところに相談に来てくれた子は、自分がこの条件の一部を満たせていないことで「申請できないんじゃないか」と思っていました。
なぜ彼女はそう思ったのか。そこには、ひとり親家庭への配慮が欠けた要件の壁がありました。
彼女を苦しめた2つの要件
彼女の話の中で今回ネックになった2つの要件がありますので、一つずつ見ていきます。
②原則として自宅外で生活している
「原則として」とあるので、自宅から通っているとしても事情によっては適用してもらえるかもしれません。
とはいえ、この条件には違和感があります。
経済的にそこまで余裕があるわけではない子どもなら、自宅から通える範囲で大学を探す場合も少なくありません。
下宿となればその分負担しなければならない費用も増えるからです。
コロナ以前から経済的に余裕のない状況の世帯ほど自宅生が多いのではと考えることは自然なことです。
そして、従来から困難な状況にあった人たちをさらに困難な状況に追い込んでいるのがコロナのはずです。
そう考えれば、原則として自宅外という条件があることに違和感を感じてしまいます。
今まさに学びの機会が奪われてようとしている大学生を支えるのが目的なら、この要件は外した方がいいのではないでしょうか?
④家庭(両親のいずれか)の収入減少等により、家庭からの追加的支援が期待できない
これはまさに、ひとり親家庭特有の事情かもしれません。
彼女が話してくれたのは、こんな事情でした。
・元々、離婚したお父さんに大学の学費を援助してもらっていた
・お父さんが一身上の都合で仕事を失い、学費の援助を継続してもらうことが難しくなった
・看護師のお母さんにも相談してみたが、「満額は援助できない。期待しないで。」と言われた
離婚したお父さんの収入は減りましたが、「両親」ではありません。
一方、現在も一緒に暮らしているお母さんは「両親」に該当しますし、収入も減っていませんが、学費援助の意思はそこまでありません。
「お母さんが援助したら済む話じゃないか!」と思われる方もいるかと思いますが、親子関係が良好でないことで、それができない場合もあります。
ひとり親家庭の子どもの学ぶ機会を守るために
ひとり親家庭の子どもにとって、大学に進学することは決して簡単なことではありません。
それは、約2割という低い大学進学率が如実に物語っています。
ここに至るまでにも様々な困難を乗り越え、大学進学後も決して楽な生活ではないと思います。
学業はもちろん、アルバイトだってあります。
そんな中頑張ってきた子どもの歩みが、このままでは途絶えてしまうかもしれません。
先の彼女の話で言えば「母親が支援したらいいじゃないか!」は正論なのですが、それでは彼女の状況は好転せず、大学に通うことを諦めるしかなくなります。
それはなんとしても防ぎたいと思っていますし、きっと彼女のように様々な事情で、今回の支援が受けれるかどうかわからない大学生は少なからずいると思います。
そこで、ぜひ皆さんに知っていただきたいことがあります。
それは、現在の要件がそもそも申請の意思すら奪いかねない不十分なものであるということです。
僕らに相談に来てくれた彼女も、もし相談先がなければ申請を諦めていたかもしれません。
「より現金が手元に早く届くスピード重視の制度設計」は大事です。
とはいえ、それでは細やかな配慮が行き渡らずこぼれ落ちる人が必ず出ます。
現状では最後の判断を各大学等で行うとあるので、それぞれの大学が「細やかな配慮」を持って判断していただくことを願うしかありません。
どうか今回の給付金が、今まさに不安の中にある大学生に「諦め」を突きつけるのではなく、「希望」を届ける制度になることを願っています。
親の経済的事情で通塾を諦めているひとり親家庭の中高生はご連絡ください
実は、今回相談に来てくれた子は元塾生です。
当時から「家におかんの彼氏が来んの嫌やねん」など、ひとり親家庭特有の悩みを打ち明けてくれていました。
私たちあっとすくーるが支えるのは、子どもたちの今だけではありません。
ここで築いた繋がりを活かして、この先の人生で子どもたちが困難にぶつかり、自分だけの力ではどうしようもできなくなったときに、必ず支えになります。
今回相談してくれた彼女が大学で学び続ける道も、必ず守ります。
彼女のように、ひとり親家庭がたくさんいる事も知っていますし、私達はできるだけ多くのひとり親家庭出身者と繋がりたいと思っています。
ですので、この記事を読まれて、親の経済的事情を知っているので、通塾を諦めているひとり親家庭の中高生の方は、あっとすくーるの学習支援のページをご確認下さい。
利用条件はありますが、ご寄付等を通じて、ひとり親家庭向けに格安で利用できる制度なども運用しています。
また、現在は「学びのバトンプロジェクト」という、自己負担なしで対面・オンラインの学習支援を受けられるサポートも行っております。
こちらもぜひご活用ください。
あっとすくーる代表 渡 剛