お知らせ
5月10日の母の日に、前澤友作さんが「前澤ひとり親応援基金」を設立されることを発表されました。
ネットでは「売名行為」と言われるなど反応が様々なこのプロジェクトについて、一当事者として自分なりの見解をまとめてみました。
今回の記事は「こう感じる当事者がいるんだな」ということを通じて、じゃああの子やあの家族だったらどう感じるんだろうか?と、たくさんの方に考えていただくきっかけにしていただけたらという思いで書いています。
お母さんごめん。これ応募して欲しい。
まず、中学生とか高校生くらいの僕だったら、間違いなくこう言います。
もちろん僕がこんなことを言わなくてもうちの母は応募してくれるかもしれませんが、もしも知らなかったり、知っていても何かしらの事情で応募を躊躇っているとしたら、間違いなくこう言います。
中学生の時の自分であれば、「この10万円をお兄ちゃんが借りてきた借金の返済に使ったら?」と言うと思います。
そんな理由で応募が通るかもわかりませんし、そもそも10万円という金額じゃ全然足しにもならないかもしれませんが、目の前でしんどそうなお母さんを見てるのが辛すぎた当時の僕なら、藁にもすがる思いでここに飛びつくと思います。
高校生の時の自分であれば、「この10万円を進学費用に使いたい」と言うと思います。
私立の大学の受験費用に充てるか、はたまた進学後の諸々の費用に充てるか、思いつく使途はいくつかありますが、こういうことに使うと思います。
ちなみに当時、「滑り止めに絶対に私立の大学を受けておいた方がいい」と言ってくれた先生に「いやです。受けません。」と頑なに返してました。(最終的に受けませんでした)
先生なりの親切心だったと思うのですが、もう少し配慮してもらえたら嬉しかったなぁというのが正直な感想です。
受けるお金だってバカにならず、受けたいと言うことは親にさらなる負担をかけることになってしまいます・・・。
参考書を買いたいからお金もらっていい?と聞くのに、2日前ぐらいから気合を入れないといけなかった僕です。
私立の受験費用なんてお願いしようと思ったら、1ヶ月以上前から気合を入れないといけません。
勉強が手につかなくなります、間違いなく。
そんなわけで、通るかどうかはさておき、このフォームに入力するだけで10万円がもらえるなら応募して欲しいと頼みます。
「お母さんごめん。」の「ごめん」の理由
でも、決してそれは楽なことではありません。
申し込みフォームを見ると、例えばこんな項目があります。
「再婚など、新たなパートナーシップについては、どのようにお考えですか。」
「養育費を受け取れていない方のみに質問です。養育費についての書面での取り決めはありますか?」
聞かれて嬉しい項目じゃないのは明らかです。
未婚で、誰にも相談できずに、でも1人でも子どもを育てると覚悟を決めて産んだお母さんたちがいます。
その方々に、軽々しく新しいパートナーシップについて聞くことは、僕にはできません。
養育費の取り決めについても、書面で取り決めをしなかった当時の自分を責める保護者がいるかもしれません。
そう考えたら、僕にはやっぱり聞けません。
当事者を支える立場としての今の自分だったら「なんて配慮がないアンケートなんだ!」と思う気持ちも0じゃないです。
0じゃないんですが、でも当時の自分だったらって考えたときに、やっぱり「お母さんごめん。これ応募して欲しい。」って言っちゃうと思います。
自分が気持ち的に楽になれると思うのが一つ。もう一つは、これでお母さんも少しは楽になるだろうなと思うからです。
でも本来、こんな葛藤をしないといけないんでしょうか?
こんな葛藤を経なければひとり親家庭で生きていくことが難しい社会は、僕は嫌です。
誰がやるべきことなのか
当事者として育ってきた自分自身の経験から言わせてもらうならば、今回の前澤ひとり親応援基金はありがたいです。
お金の問題だけが自分の努力でも家族の努力でもなんともできなかった最後の壁だったことが、今回の基金を肯定的に見る理由です。
話は変わって、おそらくこの10万円に応募する方の中に、この10万円を最後の希望として応募される方がいると思います。
でも、本来そんな状態になってしまっていることがおかしいですよね。
コロナがあろうがなかろうか、日本のひとり親家庭の子どもの貧困率は50.8%と、2人に1人の割合です。
先進国の中でも、トップクラスに高いです。
一人一人ができることを考えて、自分にできることを実践していくことはもちろん大事ですが、もっと国として、社会全体として支えていかないといけないことは明白です。
今回の前澤さんのアクションが1人でも多くのひとり親家庭にとって希望になることを願いつつ、このアクションを、ひとり親家庭が暮らしやすい社会について考えるきっかけにしていきたいです。
かく言う私たちも、2010年からひとり親家庭の子どもやその家族をサポートしていて、コロナ禍において困っている中高生のひとり親家庭に学習支援を行っています。
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あっとすくーる代表 渡 剛